全国各地でZEBにチャレンジ 渡辺パイプ 函館サービスセンター(後編)
- 21/10/15
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渡辺パイプ(東京・中央)は、全国展開する自社サービスセンターの新築案件をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とする取り組みを進める。前編に続き、寒冷地版の先例となった函館サービスセンターを中心に関係者がZEB設計の在り方を語る。
渡辺パイプ 函館サービスセンター(写真:渡辺パイプ)
2020年9月から全国のサービスセンター(SC)をZEBとする取り組みを進めていますね。どういうきっかけだったのでしょうか。
竹中耕司氏(渡辺パイプ総務ユニット建築・営繕グループグループリーダー):2019年に、当社が中核となるセディアグループが長期ビジョン「SEDIA2030宣言」を打ち出しました。これを受けて社内の各部署がそれぞれSDGs(持続可能な開発目標)を設定していくなか、私たち総務ユニットの建築部門で着目したのがZEBでした。
建設コストが高くなり難しいのではとも思いましたが、初めて取り組んだ岐阜SC(2020年9月完成)で手応えを得ました。そこで、宮崎県延岡市と北海道函館市のSCに展開しました。まず、国内の中央と南北の地域で計画し、地域ごとの違いを比較しようと考えたのです。結果的に、いずれもBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)で最高レベルの「一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスのZEB」を取得できました。
一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスのZEBは、当初から狙ったのですか。
竹中氏:これがSCにとって最適解かどうかは分かりませんが、まずは高いレベルを目指しました。以前からいくつかのSCで設計・施工を依頼してきた大和ハウス工業がZEBのノウハウを持っているので、相談しながら計画を進めています。
谷口和紀氏(大和ハウス工業近畿設備技術部環境・設備G主任技術者):近年は再生可能エネルギーの導入拡大に伴って電気料金が高くなりました。さらに新型コロナウイルスの感染防止策でテレワークが増えてオフィスに在席する人数が減ったため、従業員1人当たりの電気料金はより高くなっています。ZEBは、こうした状況の下、エネルギー消費量を減らす要請に応える取り組みといえます。
寒冷地に合ったZEB
函館SCは南北に長い配置の建物です。ZEBとするには不利な形状ですが、そうした面は設計上どう考えたのでしょうか。
竹中氏:動線の効率性から建物配置を設定しました。また当社のブランディング上、ロードサイドからの建物の見え方も大切です。横連窓、外壁の色、サインの仕様などの基本様式を定めており、各SCはそのデザインを崩さない前提で設計を進めています。函館SCは寒冷地にあるため「断熱面では窓を少なくした方が効果的」という提案も受けましたが、あくまでもSCとしての在り方を優先しました。
土橋弘典氏(渡辺パイプ総務ユニット建築・営繕グループ建築担当):具体的には、事務所周りの外壁に厚さ130mmの硬質ウレタンフォームを吹き付けるなど寒冷地に即した断熱性を確保しました。
函館サービスセンターの1階事務室(写真:渡辺パイプ)
函館サービスセンターの2階事務室打ち合わせコーナー(写真:渡辺パイプ)
敷地には余裕がありますが、太陽光発電パネルは屋根だけに34kW分を設置したのですね。
児玉俊介氏(大和ハウス工業仙台支社北海道・東北設計部北海道設計課主任):地面上にパネルを置く方法も検討しましたが、結果的に屋根だけに設置しました。寒冷地の地面に架台の基礎をつくるコストや配線の長さなどを勘案すると、建物の構造体を利用して屋根に設置する方が効率的という判断です。
寒冷地の函館市と暑い地域の延岡市では、ZEBを計画する際にどういう違いがあるのでしょうか。
谷口氏:寒冷な地域では断熱性の確保が大切なのに対し、暑い延岡市では極端に冷房負荷が大きくなるので遮熱が重要になります。ブラインドの色ひとつで日射熱の影響が違ってくるので、細かい面まで配慮して設計しています。
太陽光発電については、南北の地域差はあまりありません。日射角が高い南の地域は北の地域に比べて発電効率が高くなりますが、パネル面の温度が高くなることによる効率低下も生じます。両者によって効果が相殺される格好です。むしろ晴れの日が多いか少ないかが影響します。
竹中氏:そのため、現在計画中の福井SC(福井市)のように雪が多い地域では太陽光発電パネルを設置しない形を想定しています。今後も、投資効果と費用対効果を勘案して普及しやすいZEBを目指します。
今後、どのような意識でZEBに取り組んでいきますか。
竹中氏:気候変動をはじめとする環境問題、エネルギー問題は企業が取り組むべき大きな課題です。対応策はZEBだけではありませんが、私たちも建材を扱う商社として問題解決に貢献していく責務を担っています。建材メーカーや工務店などの取引先にもZEBがメリットをもたらすことが伝われば、例えばメーカーが対応製品をつくるようになるなど動きは広まっていくでしょう。当社のZEBが、そうした動きのきっかけになればと考えています。
渡辺パイプ総務ユニット建築・営繕グループの竹中耕司グループリーダー(左端)と同グループ建築担当の土橋弘典氏(右端)。画面内は大和ハウス工業の担当者。左が近畿設備技術部環境・設備Gの谷口和紀主任技術者、右が仙台支社北海道・東北設計部北海道設計課の児玉俊介主任(写真:守山 久子)
(日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)
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